式典での挨拶

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令和5年度 3学期始業式 式辞

最終更新日 [2024年1月9日]  

式辞

 先ずは、新年元旦に発生した石川県能登半島地震においてお亡くなりになられた方々へ哀悼の意を表

 ますとともに、被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。

さて、本日ここに新たな年を迎え、全校生徒のみなさんの元気な姿を拝見し、「よし!筑豊高校のために

今年も頑張るぞ」と改めて背筋が伸びているところです。みなさん!新年明けましておめでとうござい

ます。

 今日はみなさんそれぞれの人生を導いてくれる「道」、そしてその時々における環境と出会いについて

考えてみましょう。私が生まれた翌年に発表され、双子のデュオ ザ・ピーナッツが歌った「銀色の道」

の歌詞が私にとって人生の応援歌のようで、苦しい時、悲しい時に励まされたものです。歌詞の一部を

紹介します。

「遠い遠いはるかな道は 冬の嵐が吹いてるが 谷間の春は花が咲いてる ひとりひとり 今日もひとり 

銀色のはるかな道 ひとりひとり はるかな道は つらいだろうが頑張ろう 苦しい坂も止まればさがる 

続く続く 明日も続く 銀色のはるかな道」

 ここで私が歩んできた「銀色の道」の一端をみなさんへお話しします。

 「校長のつぶやき」 杉野晴一 1965年 昭和40年5月20日 現宮若市 元宮田町にて誕生 皐月

晴れに生まれた長男 一番目の子という事で「晴れるに 漢字の一 横いち」で「せいいち」 子どもながら

何とも単純な命名由来だなと感じた。私の銀色の道のスタートだ。幼少期に直方市へ引っ越し、上頓野

にある、保育園に入園。覚えていないが母からこっぴどく叱られたらしい。大好きな女の子に泥で作った

泥だんご投げつけ事件。愛情の裏返しで愛の表現、大失敗だったようだ。おそらくこの時に女の子には優

しくしなければいけないことを学んだのだろう。これも覚えてはいないが、運動会の途中で校舎の裏で弁

当を食べている写真もあった。おそらくこの時に弁当は昼休みに食べるものだと学んだのだろう。こうし

て小学校へ入学。親が言うには落ち着きのない子どもだったらしい。そこで、父から礼儀作法を重んじる

剣道を勧められ、5年生の時にN少年剣道クラブへ入門。剣道具を肩に抱え、稽古着・袴で地元の商店街

を歩いていた時に「かっこいい」と声をかけられ、その気になった事を覚えている。後でよくよく考えて

みると、杉野がかっこいいのではなく、稽古着・袴姿がかっこよかったのだろう。この頃、ソフトバンク

ホークスの王貞治会長が私と同じ誕生日である事を知りジャイアンツの大ファンになったことを覚えて

る。また、一つ下の初恋の女子が色違いのセータを着ていて心ときめいた事もよく覚えている。らくだの

柄だった。今だったら絶対に買わないと思う。こうした平凡な小学校時代から中学校へ入学。生まれた時

には誰も想像しなかったであろう銀色の道に冬の嵐が吹いた中学時代。中学校では剣道部のキャプテンを

務め、部活後も「もっと強くなりたい」そんな一心で地元警察署の道場へ週に3回通って、大人に混ざっ

て鍛えていただいた。今思えば恐ろしいほど上達し、剣道が一番楽しかった時期だったと思う。たくさん

の大会でメダルやトロフィーをいただき部屋にきれいに飾った。さあ、いよいよ高校受験。誘われていた

県立の剣道の名門校を受験した。当時推薦制度はなく5教科勉強勝負。剣道の実績で何とかなるだろう。

なるはずがない。結果は見事に不合格。15歳にしての人生初の大挫折。当時の中学浪人は珍しかった。

卒業した中学校ではおそらく杉野一人だけだったと思う。冬の嵐到来であり、銀色の道が大きく方向を変

えた瞬間でもある。そのショックは計り知れず、発表当日の杉野の部屋はふすまは破れるは机がひっくり

かえるは、かなり荒れたらしい。しかし、父と母が私の心を抱きしめてくれたおかげで1年間必死で勉強

した。将来はパイロットになると心に決めたのも浪人中だった。1年後、再度同じ県立高校を受験し合格。

剣道部へ入部した。冬の嵐のおかげで文武両道を目指し、勉強も部活動も自分なりに頑張った。しかし、

自主的に練習を重ねた中学時代とはうって変わって名門と言われるだけに徹底的に鍛われた。そんな杉野

に1年生の夏休み、銀色の道ばたに花が咲いた。中学校の時の同級生と再会。練習のきつさから逃げたか

ったのだろう、お付き合いをはじめた。しかし、日々の練習は過酷で休みも盆と正月だけ、責任を感じ、

ある日別れを告げると号泣された。あれから41年もの時間が過ぎている。切ない青春の想い出だ。一年

次の三者面談で文理選択の確認があった。担任は「杉野、どっちにするか?」杉野が答える「将来はパイ

ロットを目指しているので理系でお願いします」担任は「うーん?おまえの頭は理系じゃないぞ。文系だ」

母の方を向いて助け船を求めた。すると母は杉野に向かって「だってよ!先生が言われているとおり文系

がいいんじゃない?」先生が言うことは結構絶対の時代。今じゃありえない進路指導だ。愕然としたこと

を鮮明に覚えている。粘って自分の意思を根気強く訴えればよかったのだろうが、ここでまた銀色の道は

大きく方向を変えた。こうして2年半の剣道の修行は辛く苦しい坂道だったが、部活動引退後に大運動会

へ向けてブロック長になり、学校行事の中核たる役割を担った。青春到来だ。この学校の伝統で鉢巻きを

女子に縫ってもらって、ミシン縫いであれば脈なし、手縫いであれば脈あり、そんな儀式たるものがあっ

た。勇気をもってブロック長の鉢巻きを女子にお願いした。結果は想像に任せたい。懐かしい青春の一ペ

ージだ。その後、大学は更なる剣道の修行を目指して、東京にある大学の体育学部に進学した。長渕剛の

「とんぼ」をカラオケでよく歌った。銀色の道はある程度将来の職種が予想できる方向にあり、授業と

朝・夕2回の稽古に励み、4年生の春、教職最後の実習「教育実習」を母校でお世話になった。ちょう

ど文化祭前で、毎日、受け持った1年生のクラスの合唱の練習に、部活指導へ行く前に必ず参加した。

素人なりにアドバイスをしたが真剣な眼差しで話を聞いてくれる生徒達と接し、こちらの本気度も増し

ていったことを記憶している。合唱コンクール、結果は1年生の部、10クラス中、見事に優勝。実習

最終日、担任の先生が「最後のホームルームは一人でいってこい」と言われ、教室へ入ると机は後ろに

下げられ、みんなが横並びで整列していた。学級委員が「先生、こちらにどうぞ」と教壇の一脚の椅子

に案内してくれた。「杉野先生、三週間の感謝を込めて合唱コンクール優勝曲を贈ります」そして、さ

だまさしの「天までとどけ」の三部合唱が始まった。東京という大都会で善と悪、理不尽と向き合って

きた杉野の目はもしかしたら淀んでいたかもしれない。その目から涙とはこんなにも溢れるものなのか?

嗚咽するわけでもなく、ただひたすらに涙が流れた。おそらく言葉にならないとはこんなことなのだろう

か。最後に代表生徒が「杉野先生!必ず教壇へ帰ってきてください」と純粋な瞳で私にメッセージをくれ

た。第一進路希望は警察官と決めていたが、ここでまた銀色の道が大きく方向を変えた。言うまでもない

がその一ヶ月半後、福岡県教員採用試験を私は受験した。そして今がある。筑豊高校において君たちと先

生方との出会いがある。幸せだ。高校一年次の担任の先生との出会いがなかったら、教育実習の時の生徒

との出会いがなかったら。はたして私はどんな銀色の道を歩んだのだろうか。銀色の道に答えはない。

 本日の式辞は、みなさんの幸せを心から願って、「人生良い事ばかりじゃない!そして、人生悪い事

ばかりでもない!」、人生その時々の出会いと与えられた環境で演出されるものだ。それぞれの銀色の

道を自分自身の足でしっかりと歩んでいってもらいたい。そんな思いでつぶやいてみました。

 最後になりますが、新学期を迎え、1年生は上級生になるための地力をつけてください。地力とは当

たり前のことを当たり前にやること、基本的なことを地道に行うことです。期待しています。2年生は

先ずは来週1月16日からの修学旅行が二度とない青春、一生の思い出となるようしっかりと準備して

ください。そして、3年生からのバトンをしっかりと受け継ぐためにも、最上級生となるべく責任と自

覚を養う三学期にしてくだたい。3年生はいよいよ卒業まで出校するのも約三週間、全員が進路実現を

果たし笑顔と涙で卒業していって欲しい。そして、人が生きる上において大切な事は別れ際、去り際だ

とよく言われます。今、人間関係がうまくいっていない仲間がいるならば、このまま卒業してはいけま

せん。誰一人、別れ際、去り際に後悔がないよう、卒業式を迎えて欲しいと願っています。

結びにこの新しき年が生徒諸君にとって慶びに満ち溢れる幸せな一年となるよう心から願い式辞とたします。

            令和6年1月9日

                       福岡県立筑豊高等学校長 杉野晴一

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